2017年04月14日

不動産鑑定と不動産売却査定の違い

不動産の価格は、一般に、(1)その不動産に対してわれわれが認める効用(2)その不動産の相対的稀少性(3)その不動産に対する有効需要の三者の相関結合によって生ずる不動産の経済価値を、貨幣額をもって表示したものである。

そして、この不動産の経済価値は、基本的にはこれら三者を動かす自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定される。

不動産の価格とこれらの要因との関係は、不動産の価格が、これらの要因の影響の下にあると同時に選択指標としてこれらの要因に影響を与えるという二面性を持つものである。

不動産鑑定評価基準とは、国土交通省より公開される不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うに当たっての統一的基準です。その冒頭にある不動産価格の定義をご紹介しました。

不動産鑑定士の資格試験は、弁護士や公認会計士に匹敵する難易度と言われていますので、深い部分まではとても掘り込めませんが、この定義を私なりに考えてみました。

1)不動産に対してわれわれが認める効用

効用という言葉を聞くとクスリの効き目というイメージがありますが、辞書によると「使い道(使用価値)」という意味もありました。その不動産を使い道、例えば、4人が暮らせる(寝たり、飲食したり、寛いだり、お風呂に入ったり、など)という基本的な部分から快適性などの満足度までを加えた価値で、主体的に、この効用に対していくら出すという価格でしょうか。

2)不動産の相対的稀少性

土地であれば立地や環境など、建物であればデザイン性や眺望など、求められる需要と送り出す供給のバランス、需給関係でしょうか。不動産に限らず、限定品は高くなり、一般的に普及しているものは安くなるのと同じで、買いたい人がたくさんいる立地なら高くなり、売りたい人がたくさいいるなら安くなります。

3)不動産に対する有効需要

有効需要を言い換えれば市場性でしょうか。賃貸に出した場合に稼げる力、売却した際に得られる力、その収益性から導き出された価格、借り手が多いなら賃料が上がり評価も上がる、買い手が多いなら売却価格も上がり評価も上がる、という感じでしょうか。

上記3つを鑑定実務では、1が原価法、2が取引事例比較法、3が収益還元法と呼ばれています。

また、後ろ文の「自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の相互作用」という表記がややこしくさせますが、自然的は災害リスク、社会的は環境、経済的は地域経済、行政的は法規制などが代表的な事例と考えられます。

そして、価格形成三要素(三者)と外部要因(後文)のそれらが互いに関係しあい、価格が形成される過程を算出したものが鑑定となります。

東野圭吾著作に登場するガリレオ先生の言葉を借りれば「数学的に理論を積み重ねたアプローチで価格を算出するのが不動産鑑定、物理的に現場の事例(実験)を積み重ねたアプローチで価格を算出するのが不動産売却査定」という感じになります。

鑑定の理論を細かく見ると一つ一つの文章は理解できます。しかし、その膨大な短文をすべて組み合わせて数学的に考えるのは、やはり難易度が高い試験をクリアした資格者のみで、私には到底不可能であると納得します。

なお、理論よりも現場の感覚の方が正しかった、ということも往々にして起こるのが、不動産の現場です。そして、勉強はしていませんが、この鑑定理論を肌感覚で身につけているのが宅建士(不動産屋を便宜上、資格名で表記)です。

不動産鑑定評価基準 http://tochi.mlit.go.jp/wp-content/uploads/2015/08/fe5749e7d829ce22c81ad250adee382c.pdf

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2017年04月13日

揺れやすさマップが見直されます

これからの地盤判定が変わるかもしれない。

4/9に放送されたNHKスペシャル「大地震、あなたの家はどうなる?〜見えてきた”地盤リスク”〜」では、今まで、高台(台地)だから大丈夫、低地(平野)だから危ないという、軟弱地盤と支持地盤の深さなどで単純に考えてきましたが、より細かく判定しなければならないということが示されました。

ー番組内容(放送案内から抜粋)ー

熊本地震から1年、最新の解析によって新たな“地盤リスク”が浮かび上がっている。

震度7に2度襲われ大きな被害が出た熊本県益城町。専門家と共に調査すると、家屋の被害が活断層の近くにも関わらず、実は“まばら”に広がっていることが分かった。

主な原因とみられているのが、深さ数十メートルまでの軟らかい地盤。特に戸建てに影響を与える揺れが、2倍に増幅させていた可能性が浮かび上がったのだ。

軟弱地盤の中でも、表層で揺れがこれほど増幅することが確認されたのは初めてだ。新たな知見をもとに、首都圏では“地盤リスク”の見直しが進んでいる。

高性能の地震計やボーリング調査などの膨大なデータを集め解析すると、「戸建てが揺れやすい地域」「中高層ビルが揺れやすい地域」など、従来よりも詳細な分布が見え始めている。首都直下地震の被害想定の見直しにもつながる可能性があると専門家は指摘する。

首都圏の地盤データは3月中にもまとめられ、その後、他の地域の解析も行われる予定だ。最前線の対策とともに新たな脅威“地盤リスク”の姿に迫る。

http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170409

ー以上ー

放送内容を抜粋しますと、軟弱地層の深さにより建物の揺れ方が違う。平野部よりも軟弱地層の深さが浅くても(支持地盤までの距離が近い)、一概に大丈夫とは判断できない。上記、案内文の通り「まばら」であるということが特徴的です。

今後、新しい地盤リスク(揺れやすさマップ)が公開される予定(今年中)です。この揺れやすさマップが公開され、特に「揺れやすい」と判定された場所に所在する土地やその土地に建つ建物の評価は下がることになります。

判定されてしまえば、それを消すことはできず、買主が確認せずとも、売却の際に不動産業者は伝えざる負えないため、その存在は買主側に知ることになり、それが売却価格の低下につながります。

この判定結果には対策もしようがないため、該当しないでと祈るのみとなります。

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2017年04月09日

不動産のドラマや小説にも監修を

史上最年少で将棋のプロ棋士となった愛知県の中学3年生、藤井聡太四段が4日の対局に勝って、デビュー戦から11連勝の新記録を達成した。

映画界では先月前編が公開された(後編は今月公開)「三月のライオン」、今月DVD化された「聖の青春」など、立て続けに将棋が題材となった。

このように将棋が話題に取り上げられることが多くなり、一時的なブームが訪れる前触れでしょうか。

映画やドラマが制作されるとき、将棋であれば「将棋監修」、この他にも、法律、歴史、医療、科学、宇宙などなど、その道の専門家がリアリティを追求するために助言する役割をもつ「監修」という役割があります。

先の映画では、将棋そのものと将棋界の習慣や文化、雰囲気など、現実離れして白けてしまわないように、監修のみな様がたくさんの助言をされ、制作サイドも意見を取り入れたように感じました。

不動産業界でも、昨年、「家を売るオンナ」を始め、不動産業界側、消費者側それぞれの視点からのドラマが制作されました。

同じ業界に属する立場として拝見させていただきました。その感想は、かなり現実的でリアリティがある、という面と、う〜ん、そんなことはないよ、という面の半々というところでしょうか。

ドラマですからデフォルメしたり創作したりされることもあるでしょうし、あくまでもフィクションということで割り切れれば楽しく拝見させていただけます。さらに、日の目を見ない不動産業界が取り上げていただくだけで、とてもありがたく思います。

小説の世界でも、人気作家の乾くるみさんが「物件探偵」という不動産を題材とした小説(ミステリーのような、人間模様のような)を発刊されました。

紹介文には「間取り図には、あなたの知らない究極の謎(ミステリ)が潜んでいる」「150万部のベストセラー「イニシエーション・ラブ」で日本中をまんまと騙した作家が、不動産に絶対騙されないコツ、教えます!!」と刺激的な文言が書かれており、騙されないためにも読まなくてはと、手に取りました。

内容は、不動産の声が聞こえる宅建主任者(現在は宅建士)が、トラブルに巻き込まれた消費者を救済する(謎を解く、真理を導く)という短編6話で構成されております。

新しく不動産投資を始めた地方の人、アパートに暮らす一人暮らしの女性、離別した子供を自宅に引き取った人、下町に古いアパートを所有する女性、定年後に時間を持て余す人、事故物件を買った人、などがトラブルに巻き込まれ、そこに「物件探偵」が現れます。

その時「怪しいものではありません(宅建免許を提示し)宅建主任者です」と名乗ります。これで、あ〜安心となるのはリアルではなく、話の流れ上で仕方ありません。また、宅建主任者ではなく宅建士だよ、という面も置いておいて、一番に気になったのは「宅建という認定をもらっている」というくだりです。

宅建士(旧主任者)は、認定資格ではなく、国家資格であり、資格者とおっしゃって欲しかった。本来は、取引に携わる人は全員必須としなけばならないのですが、事務スタッフでも他の職種でも、とにかく社内で5人に1人以上の資格者が所属していればいい、という規制の甘さが、資格から認定と格下げされてしまう要因なのでしょうか。

これからも業界のことが、書籍やメディアで取り上げられることが増えて欲しいと思っております。その際に、不動産業界の監修をされる方を是非活用してほしいと切に願います。小説のようにトラブルに巻き込まれないためにも。

先日「コンピューター将棋ソフトが、ついに名人を破った――。将棋ソフトの「PONANZA(ポナンザ)」が佐藤天彦名人(29)を圧倒した。」というニュースが流れました。

また「ビットコインの基礎となるブロックチェーン技術が発展するとなくなる職種」のなかで、不動産営業が取り上げられていました。

将棋も不動産業界も、コンピューターが席巻するようになると、ドラマもトラブルもなくなるのでしょうか。

乾くるみ 『物件探偵』 | 新潮社 紹介サイト http://www.shinchosha.co.jp/book/350781/

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2017年03月30日

さまざまな査定評価方法の使い方

不動産の売却査定を実施する際、複数の評価方法を組み合わせて行われます。

「積算価格(原価計算法)」は、市場などの外部要因は考えずに、その物件を改めて作るために必要な費用を積み重ねて計算された金額から、経過した年数などの割引を行い算出された価格です。いわゆる絶対的評価、主観によるものです。これは主に建物の評価で利用されます。

近年、金融緩和による円安、東日本大震災の復興や東京五輪などの建設土木需要、人口減少による人手不足などで、建築コストが上昇しており、積算価格も上昇しております。これが、最近の新築マンション価格高騰に繋がっております。

「比準価格(取引事例比較法)」は、周辺の取引事例などの外部要因から評価される価格です。比較対象となる物件や公示地価などの公的データなどと対象物件を比較し評価を加減する方法で算出されます。いわゆる相対的評価、客観によるものです。これは主に土地とマンションの評価で利用されます。

不動産業者がいう相場はこれにあたり、従来より査定の中心はこの方法です。ここは過去の経験値、現場の相場観、消費者や周辺機関(主に銀行)などから得られる肌感覚の要素が強くなります。

ドラマで「刑事の勘」と言われ信憑性が話題になりますが、ここでは「不動産の勘」ということになります。職人さんがいう手先の感覚とも近い。このため、担当者により目利きの良し悪しが違い、人によって信憑性も変わります。

数字で表しづらく、マニュアルなどの整備がしづらいこと、お客様への資料作りが難しいことから、行政や業界では表には出しませんが、やはり、この現場感覚、職人技がとても重要になります。

特に、数字で判断しやすい投資物件とは違い、実需(自宅用)の場合、お金ではない部分も購入の要素として強く大きいため、この感覚を無視すると、なかなか売れない、もしくは逆に、安く売ってしまった、ということになります。

このお金では表せない部分の評価・価格を「限定価格」と言います。いわゆるブランド、もしくは、個別要素の特例です。

有名なところで、古く(?)は「田園調布」、今(?)は「吉祥寺」など、理屈ではなく「ここに住みたい」、または「海沿いの高層マンション(高層階)」、「絶対新築!」、「実家の近く」など、その人の好みや個別な事情なども当てはまります。

この限定価格を相場として取引事例の対象にしてしまうと、査定金額が実際の価格と大きく乖離してしまうことにもなり注意が必要です。この場合、複数の事例、複数の会社に査定を依頼すると、限定価格が紛れてきても選別ができるようになります。

ここまでの評価は、主に実需(自宅)としての査定に使われる評価方法でしたが、投資用不動産の査定で利用されるのが「収益価格(収益還元法)」です。

これは、その不動産が稼ぐ力(収益)から逆算して計算された価格です。賃料10万円を稼げる不動産であれば、期待利回りを10パーセントとすれば、収益価格は1,200万円(年120万円÷10パーセント)になります。

家賃は賃貸市場から算出されることから、計算手法を変えた比準価格とも言えます。売買からの比準価格、賃貸からの比準価格の両方を算出してみますと、割高、割安などの判定にも使えます。また、想定家賃が念頭にあれば、住宅ローンを借りるリスクの強弱を判定することもできます。

これらを受験に例えれば、積算価格はテストの点数、比準価格は偏差値、限定価格はスポーツなどの特殊能力となり、収益価格は入学後に必要となる学力という感じでしょうか。

いくら点数が高くても、周りの人がさらに高ければ合格できない、合格した人の成績が低くてももしかしたら推薦入学(特殊能力による加点で学力は参考外)かもしれない、また、いくら点数が高く、周りの人よりも成績がよくても、学校が求める学力に達していなければ合格できない。

これと同じように、積算価格が高くても、周りがさらに安ければ売れない、「あの家(土地・マンション)がいくらで売れたからうちなら」と言っても特殊な事情があったのかもしれないので固執し過ぎると売れない、購入者側が見た価格(賃料)と乖離していれば売れない、ということになります。

このようなことにならないためには、全ての価格(評価)を客観的に見て、プロの助言を受けながら、販売戦略を構築されることをお勧めします。より高く売りたいという心情、自身の所有する不動産への思いは理解できますが、あくまでも購入側の心理が重要になります。

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2017年03月29日

売る、貸すを考えるなら立地が重要

土地を1,500万円で購入し、3,000万円の注文住宅を建築し、さらに購入諸経費が土地建物併せて500万円で、購入総費用5,000万円の戸建てがある。その住宅を、親の事情(介護など)で、新築してから2年後に売却することになった。売り出し価格3,280万円、昨年の夏から売り出しているが、本日現在、売れていない。

売れない理由は、都内の仲介業者(建築をした会社の系列不動産会社)から販売されているという販売戦略の問題もあるだろうが、今回の販売では、もっと根っこの問題がある。それは、建物の評価が適正になされないこと、そして、資産価値には立地の要素が強いことである。

建物の評価について、諸経費は仕方ないとしても、土地が1割ダウンの1,350万円として、建物本体3,000万円(建坪30坪弱なので、かなり高価な建物である)が、わずか2年で1,000万円超も下落したことになる。

建物が適正に評価される環境(不動産市場、日本の住宅文化など)があれば、建物評価は2,700から2,800万円程度は維持され、土地と併せて4,000万円超の評価は得られてもおかしくはない。

しかし、中古は一切合切、同じ評価をされる市場と文化、建売住宅が建物評価1,000万円程度(新築)から相対評価され、いくら高価な建物でも、安い評価に引きずられてしまう。

死ぬまでに住み続ける終の棲家、夢や趣味を兼ねた消費としての注文住宅であれば、建てたこと、暮らすことで、お金には変えられない価値を見いださられ、評価額そのものや下落額などは気にならないのかもしれない。

資産価値として考えた場合、将来、日本の住宅に対する文化や中古住宅への評価が良い方向に変わっていくと信じられない場合、もしくは、変わらないかもしれないというリスクを考えると、今回のモデルケースでは、当初の購入で土地と建物の資金バランス(3:7)が誤っていたということになる。

もし仮に、同じ購入予算5,000万円を、土地3,500万円、建物1,500万円としていれば、土地は評価が高い(立地良し)のため価値が維持され、建物は元々が低いため評価減の幅も小さく、2年後の売却金額は、4,500万円程度は確保された可能性もある。(モデルケースも仮ケースも想定ですが)

一般家庭の資産に占める割合が大きい不動産を所有する場合、やはり資産価値が維持される物件を選びたいのは共通すると思われます。同じお金を出すなら、趣味や道楽、夢であっても、値打ちがあるに越したことはない。

そもそも、不動産の価値とはなにか。それは、不動産を利用する(暮らす)、売る、貸すなどのリターンであり、そのリターンが大きいほど、資産価値がある、高いということ。

暮らす、利用することのリターンは、生活利便性が高い、安全性が高い、快適性がある、など、時間的、物理的なメリットで図られる(デメリットはマイナス)。この場合は、土地としての部分、建物としての部分、それぞれで考えられ、所有者自身さえ満足、納得すればいい。

一方、売る、貸すという場合、自身が不動産そのものから得られる物理的なメリットは関係なくなり、他人からどのように評価されるかどうかで考えられる。

一般の方であれば、たった一人でも高く評価してもらえれば、より高く売れたり貸したりすることができるが、より多くの人が対象になれば、より高く評価してくれるたった一人が見つかりやすく、高くなりやすい。

このことから、売る場合、貸す場合は、多くの人から対象になるようになれば価値が高くなり、このため、立地の要素がとても大きなウエイトを占めるようになる。

方位、広さ、間取り、構造、などなど、不動産を探す際に細部にこだわる方が多いが、そのような枝葉(これも暮らすには大切ですが)よりも、もっともっと重要な立地(と資金)を重視して、ある意味、割り切って判断することが重要になります。

不動産の価値は、立地の構成要素が大きな割合を占める、残念ながら、特に日本はこの要素が強い住宅文化があり(土地神話は根強いDNA)、外向きの暮らし方がよい強くなる社会からも、今後も同じように続いていくと思われます。(新築着工の総量規制、コントロールを国が乗り出せば別ですが)

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